新橋スリープ・メンタルクリニック

特発性過眠症

以前よりREM睡眠関連症状(ナルコレプシー様症状)を示さない、過眠症の存在が疑われ、その他の過眠症として考えられていたものが、「特発性過眠症」と名付けられました。つまり、病的な眠気を来す疾患で、ナルコレプシーの診断基準に当てはまらないものが、現在の特発性過眠症にあたると考えられます。
特に、睡眠時間の延長が重要視され現在では、長時間睡眠(10時間以上)を伴う特発性過眠症と、長時間睡眠を伴わない特発性過眠症に分類されています。
下記に示しましたが、ナルコレプシーとは眠気の性質が違うため、背景にある病態が全く違う可能性があるとも言われています。

また、睡眠時間が不足しているために、特発性過眠症に類似した症状を来す方も多くいます. 日中の眠気が続く場合はまず、睡眠時間が不足している可能性を考えて普段より1-2時間多く睡眠を摂ってみると良いと思います。

【疫学】

25歳前後に発症、性差なし、有病率不明(ナルコレプシーより少ないと報告されています)。

【病因】

ノルエピネフリン系の障害との関係が示唆されていますが、明確な病因は不明です。常に睡眠が必要な状態が持続し、眠っても眠気が軽減しないことから、睡眠欲求のシステムに問題があるという説や、脳が睡眠から覚醒してゆく過程に問題があるなどの報告もありますが、明確になっていません。ナルコレプシーとは眠気の質や、眠気のとれなさといった点で相違がみられ、(同じ過眠症に分類されてはいますが)病因の解明には、まだまだ詳細な研究が必要な状態です。

【症状】

・日中の過眠:長時間に渡る仮眠、短時間の仮眠ではかえって眠気が残存する。

・睡眠時間の延長:長時間睡眠を伴うものでは最低10時間。ナルコレプシーと比較して中途覚醒は少ない。
 無理に起床させようとすると酩酊状態になることもある。つまり、ナルコレプシーと比較して、しっかりと長時間眠る(それなのに眠気がある)ことが特徴と言えるかもしれません。

・日中の眠気はあるが、情動脱力発作は認められない。


ナルコレプシーと特発性過眠症の鑑別点を示します。


【診断のための検査】

眠気の訴えは、ナルコレプシーと類似しているため、明確に診断するためにはMSLTが必要となります。 8分以内に眠りに入ることはナルコレプシーと同様ですが、睡眠開始時REM睡眠期は2回未満しか認められないのが特徴です。 特発性過眠症の診断基準(睡眠障害国際分類第2版)を示します。


【治療】

ナルコレプシーと同様に原因が明確になっていないため、治療法は確立していません。 しかし、これもナルコレプシーと同様に十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活をすること、寝起きのリズムを守ること(特に起床の時刻を一定にすること)が大切です。また、可能であれば午前中や昼過ぎに、10分程度目をつぶって休息を取るといいかもしれません。